※本記事は2021年7月現在の情報に基づいて作成されています。
電子帳簿保存法は改正により導入のハードルが下がった
電子帳簿保存法を活用すれば、これまで紙で保存しなければならなかった国税関係の書類を電子的な方法で保存することが可能になるため、保管のためのスペースも削減することができますし、資料を探すことも容易になり、また昨今のテレワークの普及にも対応できるため、何かと便利になることが期待されるはずですが、これまであまり電子帳簿保存法を適用している事例は多くはありませんでした。その原因は、その導入のハードルにあったように感じられます。
そのため近年はどんどんとハードルを下げる方向で改正が重ねられているようです。かなり頻繁に法律の改正が繰り返されているため、電子帳簿保存法の適用を検討する際には最新の法律を確認する必要がありますし、適用後も常に最新の法改正をフォローしていく必要がありそうです。
従来の電子帳簿保存法の適用要件
従来の電子帳簿保存法適用のための高かったハードルの例としては、
・税務署の事前承認
・タイムスタンプ
・マニュアルの備え付け
・相互確認
などが挙げられます。
これまでは電子帳簿保存法を活用しようとしても、事前の税務署による承認が必要とされており、その申請は適用開始の90日前までに行う必要がありました。そのため、例えば来期首から開始することを期末付近で決定したとしても、法的には認められていなかったのです。90日前までに税務署に承認申請をし、それから概ね3ヶ月程度で承認を受けるという流れになっていました。書類を電子で保存することによりオペレーションをスムーズにしたいのに、肝心の制度自体がスピーディーなやり取りを阻害していたのですね。
また、紙で受け取った請求書や領収書などの書類は、スキャナ保存する際にタイムスタンプを押す必要がありました。その後の書類の改ざんを防止するという趣旨だったのだと思いますが、認められたタイムスタンプの要件を満たすには、現実には限られたツールを使用するしかありませんでした。近年は対応するツールも増えてきていますが、以前はとても少なかったのです。しかも、タイムスタンプは受領者が自ら押す場合には書類への自署を要する上、書類の日付から3日以内にしないといけないという、ほぼ非現実的なルールもありました。
さらには、受領者が自らスキャナ保存した場合には、受領者と別の担当者が原本と照らし合わせて書類の内容が適正であるかどうかを確認しなければならないという相互確認という制度もあり、その確認者や確認方法等を定めるマニュアルの備え付けも要求されていました。効率性を求めて電子帳簿保存法を適用したいのに、法律が非効率な運用を定めてしまっているという状況でした。
このように、紙で保管している場合には法的には要求されていない追加的業務が、電子的な方法で保管する場合にはなぜか要求されてしまっていました。これでは、電子帳簿保存法適用によるメリットよりも、デメリットの方が勝ってしまいますね。
2021年の電子帳簿保存法改正
上述したようなデメリットは、この度の改正でどんどん解消されています。
まずは90日前までの税務署への事前申請は不要となりました。2022年より、税務署による事前の承認を受けずとも、電子帳簿保存法を適用することができるようになりました。ただし、どの法人が電子帳簿保存法を適用しているのかを税務署が把握する目的で、届出自体は必要となると考えられています。
またスキャナ保存による入力期限が2ヶ月以内に伸びました。3日以内という超短期間での入力も、相当程度緩和されたという印象です。期末に1年分をまとめて記帳するという法人もあるかとは思いますが、通常月次でのオペレーションをしている会社にとっては、2ヶ月という期限はかなり現実的になったのではないかと思います。
タイムスタンプ自体も、「訂正又は削除の事実・内容を確認できるシステム」の利用で不要となりました。これは、そもそも後から内容を改ざんすることができない、もしくは内容の修正をしたとしてもそのログをたどることができるシステムを使用しているのならば、タイムスタンプを押させていた背景もクリアできるということかと思います。なお、JIIMA(日本文書情報マネジメント協会)が要件を満たすソフトを認証しているため、どのソフトを使えばいいのかは調べることが可能です。
また相互牽制や定期検査も不要となったため、経理部等の現場の負担も相当程度軽くなるように設計されたという印象です。
まとめ
電子帳簿保存法はテレワークの推進やDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れとも相性がよく、今後は導入する企業が増えていくことが予想されます。
ハードルの高さから導入を出来ていなかった企業も、昨今の改正の流れにより、導入がしやすくなっているといえます。
導入の際には最新のルールの確認を、また導入後でもどんどん改正を重ねていくルールのアップデートが望まれます。